国際カンファレンスに学ぶ乳癌術後補助療法

国立がんセンター中央病院 内科 渡辺 亨先生
1. 術後補助療法に関する基本事項
2. 術後補助療法の効果の表現法について(Reduction of AOR)
3. Adjuvant Therapy of Primary Breast cancer
7th International Conference at St.Gallen/Switzerland

1.術後補助療法に関する基本事項
乳癌はLocal disease(LD-BC)とSystemic disease(SD-BC)に分類でき、
Local disease(LD-BC)は局所療法のみで治癒できるが、Systemic disease(SD-BC)は微小転移(micrometastasis)を伴う。
微小転移の段階で全身療法による根絶を目指すのが術後補助療法であるが、
症例により微小転移病巣が薬剤に対して感受性がある場合とない場合がある。
できるだけ感受性のよい治療法を選択するためには、適切な予後因子・予測因子を指標とする必要がある。

2.術後補助療法の効果の表現法について
_Reduction of AORという表現を使いましょう。_
今までは術後補助療法の効果を5年生存率、10年無病生存率で表現していたが、これは対照群により、相異が生じる。
どんな対照群でも同じ補助療法を施行すると、同じ程度の効果がみられるとすれば、効果の程度をみるには、
再発を指標とするのがよいのではないか。(再発は毎年一定の割合で増加し、
治療効果も一定の割合で再発を抑制するという前提)
そこで....
術後補助療法をしない場合の再発をベースラインリスク(Annual Odds of Recurrence)として用いる。
(例えば、リンパ節転移が10個以上の時、AORは15%と定められていて、AORが15%というと、
一年経つと15%が再発することを表す。すなわち、一年間で85%(0.85)が無病状態でいられることを示す。
二年後にはさらに0.85×0.85=(0.85)2が無病状態でいられることになる。この仮説をもとに5年生存率、
10年無病生存率を出すと、実際の5年生存率、10年無病生存率にほぼ一致することがいわれている。)
術後補助療法をして再発率がどれぐらい改善されたかを示すのが、Reduction of AORとする。
すると....
"Reduction of AORを用いるとコントロールのAORが異なっても同じ治療を行えば、Reduction of AORは同じ値を示す。"
...ということになる。




3.Adjuvant Therapy of Primary Breast cancer
2001/2/21_24 7th International Conference at St.Gallen/Switzerland
◎ Risk categories for patients with breast cancer

※6th International Conference at St.GallenではRisk categoriesはMinimal/low,Intermediate,High
に分類されていたが、
今回はIntermediateが除かれている。

◎ 腋窩リンパ節転移陽性症例に対する治療方針

◎閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対するTrial
1.ZEBRA Trial('Zoladex'Early Breast Cancer Research Association Trial)
Zoladex(3.6mg/月×2年間) vs. CMF(28日サイクル×6コース)のTrial
 ・CMFにより閉経した症例は閉経しない症例よりも予後がよいことからCMFには卵巣抑制効果があるものと考えられる。
 ・術後治療としてZoladexはCMFと同等である。
2.EORTC-BLCG(European Organization for Reserch and Treatment of cancer)-BCCG Buserelin+Tamoxifen vs.BuserelinのTrial
 ・転移性乳癌を対象とした場合Buserelin+TamoxifenはBuserelin単独よりも生存期間が長い。
(Journal of the National Cancer Institute,92:903,2000)
3.ABSGAC05
Zoladex+Tamoxifen vs. CMFのTrial
 ・術後治療としてZoladex+
TamoxifenはCMFよりも無病生存期間が長い。
◎閉経後乳癌に対するTrial
1. CALGB9344TRIAL
AC vs. AC→PaclitaxelのTrial
 ・Adriamycinの投与量を60mg/m2以上に増やしてもDisease Free Survivalに有意差はない。
 ・No treatment vs. CMFのReduction of AORは24%、CMF vs. CAF(CEF)では12%、AC vs. AC→PaclitaxelのReduction of AORは22%であった。
2.NSAS-BC01CMF vs UFT のTrial。
(UFTを用いた唯一のTrial で、UFT は日本で使われている薬剤である。)
・No treatment vs. CMFのReduction of AORは24%、No treatment vs. UFTのReduction of AORは21%であった。
結論はまだ、でていない。

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