副乳について

・副乳ってなあに?
乳房の正常な存在部位は両側前胸部ですが、ときおり通常とは異なった場所、多くはわきの下や正常乳房の下内側に、
乳頭・乳輪あるいは乳腺組織が存在することがあり、これを副乳といいます。
これは生まれつきのものであり、そのうち乳頭だけが存在するものは副乳頭(多乳頭症)、
乳腺組織が存在するものを副乳腺(多乳房症)と呼びます。副乳の起源は、胎生6週頃の、腋窩(わきの下)から、
恥骨上縁に向かって広がる表皮の堤状の肥厚である、乳腺堤(mammary ridge)あるいは乳線(milk line)にあり、
その線上であればどこにでも副乳が生ずる可能性があります(図)。
副乳のある方は稀ではなく、左右ともにある方、
一側だけにみられる方もあり、女性、男性ともに起こり得ます。
また副乳腺は、正常乳腺と同様でホルモン分泌に反応するため、女性では生理前のホルモン分泌の多い時期(黄体期)
には副乳腺がはれてきたり痛みを伴うことがあり、妊娠授乳期ではやはり正常乳腺同様、
副乳腺も成長し乳汁を産生するようになります。

・放置しても良いのでしょうか?・何科に受診したらいいの?
・治療の必要性は?
・日常生活で気をつけることってあるでしょうか?
副乳は基本的には正常乳腺同様、病気が生じなければ放置しておいて大丈夫です。
前述のように女性ホルモンの影響により痛みを生じることがありますが、多くは一時的なものであり間もなく消失します。
痛みが強い方や持続する方に対しては、ホルモン剤や漢方薬を投与する方法もあります。
妊娠期において副乳腺が変化してきた場合の腫れや痛みでは、胎児への影響を考えるとその時期が過ぎるのを待つべきでしょう。
授乳期の腫れと痛みは局所を冷却し炎症をおさえることで徐々に改善をはかることができます。
また、乳房の痛みを伴う乳がんは、あまり多いものではありませんので、副乳が痛んでも心配はいりません。
ちなみに、副乳にできる乳がん(異所性乳がん)は極めて稀であり、乳がん全体の0.4%程の頻度で、
そのうち3分の2はわきの下にできます。
その治療法は通常の乳がんとほぼ同様、手術や放射線療法、化学療法(抗がん剤)、ホルモン療法が中心ですが、
正常乳腺と副乳腺はつながっていないことがほとんどですので、外科的には乳房温存治療のできる可能性が高いといえます。
わきの下にしこりがあった場合、他に考えられるものとして、リンパ腺の病気(炎症によるもの、他臓器のがんからの転移、
リンパの悪性腫瘍、等々)、汗の腺や皮脂腺の病気(ほとんどは良性)などもあり、その正確な診断は難しいので、
素人判断は危険です。この場合、乳腺専門医(日本乳癌学会で認定しております)を受診するのが最良の方法であると思います。
受診のタイミングとしては、どのようになった時というよりも、気になったときに受診するのが良いのではないでしょうか。
日常生活で気をつけることは特にありませんが、副乳腺のある方の場合、
乳がん自己検診の際には副乳腺も触ってみておきましょう。



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