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乳首から血や膿がでる、つまり「異常乳頭分泌」の頻度は、
一般的には乳房で受診する患者さんの5%前後とされていますが、
乳頭分泌の検査に精通する医師が診察した場合では10%以上に乳頭分泌
が認められます。
しかし授乳期でなくても乳管の中にはある程度の潤いがありますので、
分泌イコール病気というわけではありません。
その潤いの量の違い、質の違いをみることが大切です。
乳頭分泌の原因としては、生理的範囲内のもの
(多くはミルク様、水様)、乳管内の炎症によるもの
(血性、膿性)、腫瘍からの分泌や出血(血性、漿液性、ときに膿性)
、ホルモンの影響によるもの(ミルク様から水様)、
などが考えられます。乳頭分泌で要精密検査とする基準としては、
分泌物が単孔性(一カ所だけからでてくる)のもの、
性状が血性(赤いもの、茶褐色のもの)・漿液性
(透明で黄色みがかったもの)のもの、潜血反応で陽性のもの、
などが一般的です。
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乳頭分泌に対する検査法としては、分泌物中CEA値
(腫瘍マーカーのことで、その値が高い方では乳癌が潜伏している
可能性がある)、超音波検査(乳管に沿った検索によって数ミリ大の
乳管内腫瘤の検出が可能)、乳管造影(胃のバリウム検査のような
もので乳管内病変を客観的に評価できる)、乳管内視鏡
(乳管内病変を直接みて診断できる検査)、細胞診、組織診などが
あります。
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乳頭分泌を伴う乳腺疾患としては乳癌、乳頭腫、腺腫、乳管拡張症など
があります。このうち頻度が高いものは乳管拡張症と乳管内乳頭腫で、
どちらも良性疾患です。多くのものは手術の必要はありません。
乳管拡張症に伴った乳管内の炎症が原因であったものでは、
乳管造影や乳管内視鏡を行うことのより乳管がクリーニングされて
治癒してしまうことがあります。
乳管内視鏡のある施設では、乳頭腫などの良性腫瘍ならば内視鏡的な
治療も可能です。またもし乳癌であっても、分泌だけで発見される
ものでは小さな乳癌や非浸潤癌であることが多く、
小範囲の手術やリンパ節郭清なしで済んでしまう可能性が高いのです。
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臨床において乳頭分泌は軽視されていることが多いようですが、
乳腺疾患の多くは乳管上皮より発生するあるいは乳管との交通を
持つため、特に早期乳癌発見においては極めて重要な所見です。
また、乳頭分泌はそれほどめずらしいものではなく、
たとえ血が混ざっていた場合でも良性のものであることが多いのです。
しかし、その診断は難しいので、乳腺専門医(できれば乳頭分泌の検査
に精通する医師)に任せるべきでしょう。
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