平和な日々の中で突然の衝撃、乳がんになってしまうこと、それは確かに不幸なことかもしれません。
しかし、病気のために不幸になってしまってはいけません。
病気に振り回されるのではなく、自分の人生を楽しいものにしたいものです。
そうするためにはどうしたらよいのでしょうか。乳がんになってしまったのだから、
手術や化学療法をしたのだから、あれはできない、これもできない、と多くの営み、楽
しみを諦めてしまうのではなく、以前のように、みんなと同じように楽しむためには、
どうすればよいのか工夫をすること、が必要であると思います。
「これをしても良いでしょうか」ではなく「これをするためには何に注意すればよいでしょうか」と、
乳腺医やブレストケア・ナースに相談しましょう。
人間には必ず老いと病、そして死が訪れます。限りのある人生の中で、「幸せ」とは何なのでしょうか。
多くの人間は、より長く生きていたいと願うのですが、幸せを図る尺度は「長さ」がすべてではなく、
「深さ」が大切であるように思います。
輝きのある日々を送ること、目的や生き甲斐を持って充実した時間を過ごし、
喜びや楽しみを家族や友人たちと分かち合うこと、これが一番の幸せではないでしょうか。
そして、幸せになるために最も大切なことは、「感謝」と「思いやり」の気持ちです。
どんなに周りの人があなたのためにと考えてくれていたとしても、
この気持ちがなければ決して幸せにはなれません。乳房にしこりをみつけ、
初めて診察を受けたときのことを思い出して下さい。
不安と恐怖におびえながら、「早く診て」「早く何とかして」「どうしてこんなに遅いの」と、
いろんなものがじゃまに感じてしまったのではないでしょうか、周りの人も音楽も絵も香りもそして声かけも。
そんな時期もありますし、仕方のないことです。
でも、一山乗り越えたら、自分のことだけではなく、他の人のことも考えましょう。
自分を気遣ってくれた人々に「感謝」をし、かつての自分と同じ境遇にある人たちを「思いやり」ましょう。
今度は私が与える番、と。
幸せとは、つかみ取るものではなく、与えることによって得るものです。
                     
 乳腺クリニック長瀬外科院長 長瀬慈村


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