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1)”乳房のしこり”ってなに?
腫瘤と腫瘍
一般の方が”乳房のしこり”といって来院されたとき、どんなものをイメージされていらっしゃるでしょうか。多くの方は”乳癌ではないだろうか”と思い、なかばパニック状態に陥っていることがよくあります。
”しこり”って、いったい何でしょうか?
辞書には”こりかたまったもの”、”物事が済んだ後まで残るすっきりしない気持ち”などと書かれておりますが、”しこり”を専門用語にしてみると”腫瘤”あるいは”腫瘍”となります。
”腫瘍”とは、自律性と異型性を持った組織の過剰増殖で、生命に影響を及ぼさない良性腫瘍と、生命を脅かす悪性腫瘍(この中に癌が含まれます)があります。
”腫瘤”とは、臓器や組織の限局性の腫脹のことですが、一般的にはそこにできる、あるいは触れるものであればなんでも含まれてしまいます。これには、腫瘍も含まれますが、女性ホルモンのアンバランスによって生じた乳腺の変化、生理前に生じる乳腺の硬さ、正常乳腺であっても厚みのある方や乳腺表面の凹凸のはっきりした方なども入ってしまいます。
つまり、”しこり”といっても治療を必要としないものが大半を占めるということになります。
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2)乳房の異常はどこでみてもらうの?
産婦人科?内科?外科?それとも・・・
さてそれでは、”しこり”があってもほっといても良いものでしょうか。やはり怖がらずに一度検査を受けて、安心を得ておく方がよいと思います。
それでは診察、検査はどこで受けたらよいのでしょうか。理想的には乳腺の専門医に診てもらうのが最良であると思います。しかし乳腺専門医の数はまだそれほど多いものではありません。現在日本では、乳癌の治療に当たっているのは外科の先生が中心です。それを考慮するならば、もし近くに専門医がいない場合は、外科を受診するのがよいと思われます。
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3)どんな検査をするの?
触診・マンモグラフィ・超音波が基本
乳房のしこりに対する検査法の基本は、視触診・マンモグラフィ(乳房X線撮影装置)・乳腺超音波検査の3つです。これらを併用することで精度の高い診断が可能となります。それでも診断のつかない場合は、細胞診や生検が行われることがありますが、最近ではその他、CT・MRIなども用いられます。また、”しこり”に乳頭分泌が伴う場合は、乳管内の検査法が加わってきます。
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4)しこりは切らなきゃいけないの?
・悪性腫瘍は仕方がない
・必ずではない良性腫瘍
悪性腫瘍は現在のところ外科的な切除が中心であり、そう診断がついてしまったのであれば仕方がないと思います。しかし最近では、乳癌であっても、乳房すべてを取らないですむ治療法が多くなってきています。
良性腫瘍で切除が必要となるものは本来それほど多いものではなく、大半のものは放置あるいは経過観察のみで充分です。しかし良性であっても、巨大に成長する線維腺腫や葉状腫瘍は、乳房に変形をも来すようになるため切除が必要となります。また、やはり良性であっても乳頭よりの出血が続く乳頭腫や継続的な痛みを伴う硬化性腺腫なども切除の対象になると思いますが、これらではメスを入れずに乳管内視鏡を用いての切除や数ミリの切開でしこりを吸引切除してしまう方法も施設によっては可能となってきています。
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5)まとめ
乳房のしこりの90%は良性
こわがらずに受診を!
外科(できれば乳腺専門外来のあるところ)でみてもらいましょう
乳房のしこりの多くは良性であり、治療の必要性のないものです。ですが悪性でないという保証は得ておきたいものです。こわがらずに検査を受けましょう。そして受診するならば、やはりベストは乳腺の専門医にみてもらうことでしょう。
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