1.イギリス乳がん看護の歴史 |
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イギリス乳がん看護:1970年代中期より始まり、1980年代に活発となる |
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1976年Dr
Peter Maguire
乳がん診療にスペシャリストナースを導入・研究
→患者に大きく貢献することが分かった |
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1980年代
アン・テイト、シルビア・デントンがBreast Care Nurse(BNC)として活躍 |
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-BCNの普及とその推進の要因- |
(1) |
乳がん検診
イギリス乳がん:1995年時、年間3万人発症、1/2 ~ 1/3 死亡、12人に1人の割合で発症
35〜54歳の女性死因1位 |
(2) |
マクミランがん基金(市民運動)の活動 |
(3) |
看護学校にBCN養成コースを設立 |
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1980年代
BCN育成は緩徐であった
-BCN確立障害の要因- |
(1) |
外科医の要因:良き理解者でもあったが障害者ともなった |
(2) |
責任の所在とその重さに関する要因:ストマケア、糖尿病看護などに比べ、責任が重くブレストケアの場が回避されてきたのでは? |
(3) |
医師全般の要因:医師-患者の関係を妨げると誤解された? |
(4) |
他のスペシャリストチームのメンバーや専門看護婦以外の看護婦の要因:BCNの存在に脅威を感じた? |
(5) |
BCN自身の要因:BCNを浸透させるための外交・努力・勇気が必要では?
古い体質の看護界や看護の境界をやぶる努力が必要では? |
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1986年
“乳がん治療に関するコンセンサス会議”における決定
“乳がん診療において外科医は、経験豊富な看護婦によるカウンセリングを含めた診療体制をとるべきである” |
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1995年
BASO(英国腫瘍外科学会):“乳腺疾患管理のためのガイドライン”を発表。その後、ヨーロッパ腫瘍外科学会にて、ヨーロッパの標準治療体系として推奨された。乳腺疾患看護の責任と職務内容が明記され、BCNが広く認められるようになる要因ともなった。 |
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ガイドライン中に明記されているBCNの職務内容 |
(1) |
BCNは医師から患者への診断・告知時に同席する。 |
(2) |
(1)に引き続いて、患者のプライバシーが守れる部屋で、医師の説明をBCNが再度確認する。 |
(3) |
必要があれば、治療についての相談のためにBCNの電話番号・ポケベル番号を伝え、いつでも患者がアクセスできるようにする。 |
(4) |
術前・術後もBCNが独立して患者にアクセスでき、個人的なことでも相談に応じる。 |
(5) |
スタッフのスペシャリストが集まって行う、Multidisciplinary meeting(集学的ミーティング)に参加する。 |
(6) |
乳がん看護の研究を行い、関連学会に参加する。 |
(7) |
最新情報や知識を常に学ぶ。 |
2.乳がん看護の質の向上を目指した取り組み方 |
(はじめに)
患者さんへの質の高い医療を提供するためには、専門医・専門看護婦(BCN)からなる(集学的な)医療チームが不可欠である。イギリス乳がん看護:1970年代中期より始まり、1980年代に活発となる
a.乳がん患者さんが特に関心を抱いている事柄
(BCNを始める前に知っておくべきこと)
健康、症状、生存、ボディーイメージ、性に関すること、自己の評価、夫・恋人 、家族、仕事、社会生活 |
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b.BCNの役割(総論) |
(1) |
乳がん検診への参加 |
(2) |
告知時の患者へのアシスト |
(3) |
乳がん患者さんへのセカンドオピニオンの奨め |
(4) |
医療スタッフと患者・家族とのコミニュケーションの介助 |
(5) |
治療における選択肢についての情報提供 |
(6) |
乳房再建についての情報提供 |
(7) |
サポートグループやボランティアグループの紹介 |
(8) |
治療による副作用を最小限とするためのアシスト |
(9) |
精神的な困難を隠さずに表出できるよう励まし支える(告知による精神的なつらさを1人で我慢せず、自分の気持ちを表へ出すことができるように励まし支えてあげる) |
(10) |
カウンセリングや必要に応じて精神科医・心療内科医への紹介 |
(11) |
治療終了後、患者とのコンタクト |
(12) |
ターミナルの患者へ精神的な慰安を与える |
(13) |
財政的な援助やアドバイス |
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c.Breast Care Nursing の実際
-治療前-
・診断・告知時に同席する
・診断・治療方法について患者・家族の理解を助ける
・具体的な治療方法とその前後関係を伝える
-治療中-
・患者・家族に一連の治療方法の説明後、どのような治療を望んでいるかを確認する
・精神的ダメージを考慮し、治療選択を急ぐ必要のないことを説明する
・不安や恐怖を対話にて和らげる
-手術後のアフターケア-
・乳がんを受容できるよう援助する
・乳がんの再発に対する不安を克服できるよう援助する
・乳房喪失やボディイメージの変化を受容できるよう援助する
・他の治療を受け入れられるように援助する
・リハビリテーションにより患肢の不具を防止する
・患者会・サポートグループ・ボランティアの紹介をする |
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d.手術後にみられる患者さんの精神的なトラブル
-術後に患者がうつ状態となる要因-
・術前より不安が強く、うつ傾向にある人
・親しい友達や親戚のがん患者からすでに癌に対する悪いイメージが植え付けられている人
・秘密や悩みをうち明ける人がいない人
・助けになってくれる人がいないと感じる人
・乳房喪失を受容できない人
・手術後に肉体的な合併症が発症した人
・他の治療における副作用が発現した人
*上記の傾向・要因が認められる場合はカウンセリングが必要である |